暗くて良く見えないけど、あのシルエットは……。
「大和!」
「あれ、しおちゃん。どうしたの?」
「どうしたのはこっちのセリフよ、電話も出ないで」
「あ、電話した? ごめんごめん。ちょっと立て込んでて」
立て込んでて、って何よ。聞き返そうとしたところで、停車してるタクシーから小さな男の子も降りて来た。5、6歳かな? 不安そうな顔をして大和の服の裾を掴んでいる。
「この子は?」
「同じマンションの子なんだけど、怪我しちゃって。病院に連れて行ってたんだ」
男の子をよく見ると、足首に包帯が巻かれている。
「ご両親か保護者はいないの?」
「それが共働きみたいでさ。お母さんはさっき病院で合流したけど、どうしても仕事に戻らなきゃいけないって言うから……」
「それで大和が連れて帰ったんだ」
「うん、もうちょっとしたらお父さんが家に帰ってくるって」
だから大丈夫だよ、って大和は男の子の頭を撫でる。そっか病院にいたから電話に出られなかったんだね……。優しいなぁ、大和は。
「たける!」
マンションのエントランスへ入ろうとしたところで、後方から走って来た男性が男の子の名前を呼んだ。