くらし情報『【連載小説】理想じゃない恋のはじめ方。』

【連載小説】理想じゃない恋のはじめ方。

その声に反応した男の子は「お父さん!」と大声で叫び、男性の元に駆け寄り抱きつく。男の子のお父さんは大和に何度も深々と頭を下げ、家へと帰って行った。

「よかったね、お父さんが早く帰って来てくれて」

「そうだね、安心したよ」

「たけるくんだっけ、普段から仲良いの?」

「いや、喋ったのは今日が初めてかな。時々1人で遊んでいるのは見かけていたけど」

「まだあんなに小さいのに1人で留守番してたのかな?」

「うん……まぁ、事情はあるんだろうけど。これを機に考えてくれるといいね」

そう言った大和は、とても心配そうな顔をしている。

他人であっても親身になって世話をやいたり、困っている人がいれば助けてあげたり。そんな彼の優しい人柄に感心すると同時に、胸がキュンとした。

「ところで、しおちゃんはどうしてここに来たの?何かあった?」

「あっ、えーと……」

「もしかして、俺が電話に出ないから心配してくれたとか?」

「そんなわけないでしょ」

図星なだけに気恥ずかしくなって、背中を向ける。
顔が熱い。大和に会いたくなって来たなんて、言えるわけが……。

「かわいいなぁ。すっごく会いたかったから来てくれて嬉しい」

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