その声に反応した男の子は「お父さん!」と大声で叫び、男性の元に駆け寄り抱きつく。男の子のお父さんは大和に何度も深々と頭を下げ、家へと帰って行った。
「よかったね、お父さんが早く帰って来てくれて」
「そうだね、安心したよ」
「たけるくんだっけ、普段から仲良いの?」
「いや、喋ったのは今日が初めてかな。時々1人で遊んでいるのは見かけていたけど」
「まだあんなに小さいのに1人で留守番してたのかな?」
「うん……まぁ、事情はあるんだろうけど。これを機に考えてくれるといいね」
そう言った大和は、とても心配そうな顔をしている。
他人であっても親身になって世話をやいたり、困っている人がいれば助けてあげたり。そんな彼の優しい人柄に感心すると同時に、胸がキュンとした。
「ところで、しおちゃんはどうしてここに来たの?何かあった?」
「あっ、えーと……」
「もしかして、俺が電話に出ないから心配してくれたとか?」
「そんなわけないでしょ」
図星なだけに気恥ずかしくなって、背中を向ける。
顔が熱い。大和に会いたくなって来たなんて、言えるわけが……。
「かわいいなぁ。すっごく会いたかったから来てくれて嬉しい」