後ろから抱きしめられた。その瞬間、心臓があり得ないくらいドキドキして体温が上昇するのが分かった。私、大和のことを好きになっちゃった、かも……?
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事件の犯人
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「作業、終わりました! プロジェクトのデータも大丈夫です」
「あぁ~良かった、お疲れ様」
例の部署荒らし事件で紛失したデータの復元や書類の再作成作業が終わり、同僚たちに笑顔が戻る。労いの気持ちを込めて差し入れの飲み物を配っていると、1つ余ることに気が付いた。
「あれ、誰か今日休み?」
「雪村さんが居ません」
旭日がそう答えると、他の同僚が不満を漏らした。
「この大変な時によく休めるよね」
「昨日も定時で上がってましたよ。あの子、大変な時はすぐサボるんだから」
これは良くない雰囲気だな。注意しようかと思案していたところで、新実さんがやって来た。
彼は同僚たちを一瞥してから、私に向かって手招きをする。
「ちょっといいか」
新実さんは私に有無を言わせない態度で、そのまま会議室へと向かった。何だろう? 怒っているのか、明らかに機嫌が悪そう。ドアを開けて中に入ると、雪村さんが泣き腫らした顔で立っていた。