そんな風に毎日を過ごして大和と連絡をとらないまま、週末を迎えた。
「先輩、明日から出張なんだから今日はもう帰ってください」
「もう少し手伝うよ」
雪村さんが退職することになって、その引き継ぎを旭日がすることになったのだ。
「助かります~お詫びにこれどうぞ」
ありがと、と旭日がくれたチョコレートを口に入れる。すると彼女は目を丸くした。
「先輩がチョコ食べるなんて!」
「あげた本人が驚かないでよ」
「だって、いつも『太るからいらない』って言うじゃないですか」
「別に、これくらい平気でしょ」
美味しいな、これ。もう1個貰おう。
「ここ最近の先輩、柔らかくなりましたね」
旭日がしみじみとした口調でそう言い、作業する手を止めた。
「前はもっとストイックというか、ダメなものはダメって感じで張り詰めている雰囲気があったのに」
「そう、かな?」
「私の後輩なんかは、話しかける時に緊張するって言ってましたよ」
「えっ、そうなの?」
それは、ちょっとショックかも。
後輩たちには、なるべく優しく接していたつもりなのに。
「あ、違いますよ。怖がられてるとかじゃなくて、すごい人過ぎて緊張するという意味です」