くらし情報『【連載小説】理想じゃない恋のはじめ方。』

【連載小説】理想じゃない恋のはじめ方。

そんな風に毎日を過ごして大和と連絡をとらないまま、週末を迎えた。

「先輩、明日から出張なんだから今日はもう帰ってください」

「もう少し手伝うよ」

雪村さんが退職することになって、その引き継ぎを旭日がすることになったのだ。

「助かります~お詫びにこれどうぞ」

ありがと、と旭日がくれたチョコレートを口に入れる。すると彼女は目を丸くした。

「先輩がチョコ食べるなんて!」

「あげた本人が驚かないでよ」

「だって、いつも『太るからいらない』って言うじゃないですか」

「別に、これくらい平気でしょ」
美味しいな、これ。もう1個貰おう。

「ここ最近の先輩、柔らかくなりましたね」

旭日がしみじみとした口調でそう言い、作業する手を止めた。

「前はもっとストイックというか、ダメなものはダメって感じで張り詰めている雰囲気があったのに」

「そう、かな?」

「私の後輩なんかは、話しかける時に緊張するって言ってましたよ」

「えっ、そうなの?」

それは、ちょっとショックかも。
後輩たちには、なるべく優しく接していたつもりなのに。

「あ、違いますよ。怖がられてるとかじゃなくて、すごい人過ぎて緊張するという意味です」

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