【連載小説】この恋は幸せになれない?好きになってしまったのは、奥さんのいる人。
どうせ寝るためだけに帰るんだから、これと言って不満は感じていない。
だけど、数年に1度、早ければ半年に1度の頻度でやって来るXデーだけは、部屋数のある家にすれば良かったと後悔する。
「お帰り~千紗! 久しぶりね」
「お母さん、来てたんだ」
「母親が娘に会いに来て何が悪いの?」
別に私に会いたかったわけじゃないでしょ、と、喉元まで出てきた言葉を飲み込む。これを言ってしまったら喧嘩になるだけだ。
「2,3日、世話になるから」
「はいはい」
「何よ、その言い方。もっと歓迎しなさいよ」
「してるよ。お腹空いてない? 何か作ろうか?」
「適当に食べたから要らない。それより、千紗にお願いがあるんだけど」
「何?」
「お金貸してくれない? 家賃代の7万、いや5万でいいからお願い!」
またか……。
私に会いに来る時は、いつもそう。分かっていても今回は違うかもと思ってしまう自分にガッカリする。
「言っとくけど、5万なんてすぐに出せる金額じゃないからね」
「よく言うよ、正社員のくせに」
「独り暮らしは何かとお金がかかるの。お母さんだって分かってるでしょ」
「そうね、お金の苦しさは分かっているわよ。