【連載小説】この恋は幸せになれない?好きになってしまったのは、奥さんのいる人。
別れてから2カ月がたったある日、悠真さんから電話がかかってきた。
『もしもし、千紗?』
「悠真さん」
『良かった、電話に出てくれて』
久しぶりに聞いた彼の声は、相変わらず優しくて涙が溢れた。そしてその瞬間、私にとって彼は一緒に不幸になっても良い人だと気が付いた。彼の全てが恋しい。
『千紗に会いたい』
「私も……」
『本当に?』
「会いたい、やっぱり今もまだ悠真さんのことが好きみたい」
『金曜日の19時に、初めて一緒に食事をしたホテルで待ってる』
「うん、分かった」
お祖母ちゃん、ごめんね。私はやっぱり母に似て、世間一般的にいう幸せは手に入らないかもしれない。
お祖母ちゃんが望む幸せな姿は、きっと見せてあげられない。それでも私は、自分なりの幸せをきっと見つけるから。
心配しないで。
金曜日、約束の時間よりも早くホテルに着いた私は、カフェに入り紅茶を飲んでいた。カフェといってもオープンな造りになっているので、ロビーの様子が良く分かる。
少しすると、ネイビーのスーツを着た悠真さんが真っすぐこちらに向かって来るのが見えた。「お待たせ、久しぶりだね」
「悠真さん」
「元気だった?」