【連載小説】この恋は幸せになれない?好きになってしまったのは、奥さんのいる人。
えっ!」
一瞬頷いたものの、驚きのあまりご飯粒を喉に詰めそうになった。
「どうしてそれを……」
「見てれば分かるわよ、これでも一応、あんたの親なんだから」
「お母さん」
「というのは嘘。カマをかけてみただけだよ」
「ええっ!」
じゃぁ、まんまと引っかかってしまったってこと?やだな、恥ずかしい。
「私も昔はよく失恋しては、熱を出して寝込んだんだよ。覚えてない?」
「そういや、そうだったような」
「その男とはどうして別れた?」
どうしてって、それはもう……。
「一緒にいても幸せになれないから」
お母さんにこんな話をする日がくるなんて不思議だなって思っていると、母はもっと不思議そうな顔をして私にこう尋ねた。
「幸せになれないなら、一緒にいる意味はないの?」
「え……」
「その男のことが好きなら、幸せじゃなくてもいいと私は思うけどね」
「幸せにはなりたいよ。当たり前でしょ」
「じゃぁ聞くけど幸せって何? 平和に暮らすこと? お金に困らないこと? それとも誰かに後ろ指を指されないこと?」
お母さん、私が不倫してたことに気付いてるのかな。
「そもそも人生において幸せだと思える時なんてほんのひと時だよ。