2021年10月25日 16:08
【『最愛』感想 2話】 丁寧に積み重ねる描写がもたらす独特の体温・ネタバレあり
これだけでも二人の間にある深い信頼が読み取れるが、ここで梨央はニンジンが苦手である素振りを見せ、加瀬に渡してしまう。
また加瀬の弁当から自分が食べたい何かを摘まんでいる。家族以上に近しい、甘えられる関係がはっきり分かるやりとりになっている。
次の食事のシーンは、思い出の中、真田ホールディングス社長である母親の梓(薬師丸ひろ子)に引き取られた頃、母の梓、兄の政信(奥野瑛太)、梨央に加瀬を加えた歓迎の食事会とおぼしき高級中華料理のテーブル。
互いの距離の遠い大きなテーブルで、家族愛を語る梓の言葉は上滑りしている。梨央は母の手前、遠慮して苦手なニンジンを食べようとして食べられない。加瀬はその様子を静かに見守っている。
三つ目の食事のシーンは同じく思い出の中、豪華な自宅での梨央一人の食事。
梓は梨央のために、ぐずぐずなカボチャの煮物を作って家政婦に託してから仕事に出勤している。小さい頃に梨央がカボチャを好きだったという遠い記憶ひとつで。
娘への愛情はあるとわかる。しかしそれを表現するのも、届けるのも不器用な女性だと示唆する場面である。
そして、そのまま梨央が幸せな食事として思い出すのは、白川での大学寮の食事、父の作る牛丼だった。