2021年10月25日 16:08
【『最愛』感想 2話】 丁寧に積み重ねる描写がもたらす独特の体温・ネタバレあり
それは何も失われなかった頃、賑やかな寮の食堂でみんなで分け合って食べた記憶である。誰かの特別でも、誰かの悪意が向けられることもない頃。
四つ目の食事のシーンも回想、悲しい出来事が続く梨央を加瀬が連れてきた行きつけの店。
「夕ご飯、食べましたか?」残してきた弟に会えず、兄からは絶えず嫌がらせを受け、母親からもなかなか理解を得られない梨央の苦しい状況で「夕食」でも「夕飯」でもなく、加瀬の「ゆうごはん」という響きが優しい。
この家では私があなたを守ります、という加瀬の言葉に深みと説得力をもたらす温かい場面である。
五つ目の食事のシーンは、大輝の回想。陸上部の大麻使用事件に巻き込まれた女子マネージャーの菜奈(水崎綾女)と大輝が食べるラーメンである。
どん底の中で二人はもがくように麺をすする。
大輝の哀れみを拒むような「私は被害者やない」と呟く菜奈の強い目が印象的である。
六つ目は真田ウェルネス専務の後藤(及川光博)と、梓の高級寿司店での乾杯。
梨央のことを敵視している後藤は「梨央さんの未来に」と乾杯の音頭をとり、梓は「私たちの友情にも乾杯しましょう」と満開の笑顔で返す。梓もまた会社経営のパワーゲームの下で戦っている。