くらし情報『【『最愛』感想 7話】忘れてしまう絶望と忘れ得る福音と・ネタバレあり』

2021年11月29日 18:53

【『最愛』感想 7話】忘れてしまう絶望と忘れ得る福音と・ネタバレあり

【『最愛』感想 7話】忘れてしまう絶望と忘れ得る福音と・ネタバレあり

それは愛情深い家族と穏やかに暮らしてきた高校生の少女には気づきようもない異変であると思う。

だが、その指一本分の距離が届けば、声ひとつ何か届けばと(それは指一本分伸ばせなかった、声を上げる力を振り絞れなかった自分への怒りでもあると思う)その記憶を無限に手繰り続けて、15年を生きた橘しおりの気持ちを想像すると、息苦しく胸が痛む。

同時にその指が届いていれば、その時、渡辺の卑劣な犯行が明るみにでていれば、梨央もまた父と弟との穏やかな暮らしが続き、いずれは互いに想いあう大輝との幸せな日々があり得たはずなのだと、ねじれあう二つの運命に慄然とする。
【『最愛』感想 7話】忘れてしまう絶望と忘れ得る福音と・ネタバレあり

15年前に人生を捻じ曲げられた二人の女は、ともすれば手をとりあって辛い過去に向き合える可能性があったのに、その機会もまた失われてしまう。今回のラストで橘しおりは転落死して発見された。

今回、梨央を相手に大輝は「もしもの話より先を見る方がいい」と割り切った表情で語る。加瀬もまた、優を相手に「これからどう生きていくか」だと語る。

もちろんそれは正しくあるべき姿ではあるけれども、そのまっすぐさの分だけ、よどんだものや人のくらいものが見えなくなるのではないか。

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