【『ファーストペンギン!』感想1話】 見る前に飛ぶんだ!・ネタバレあり
そして巨大な既得権益として、漁協の組合長である杉浦(梅沢富美男)が立ちはだかる。
かつて生産者たちの心強い味方だった組織が、時代の経過とともに疲弊していると多くの人々が気づいているけれども、あまりにも社会に深く絡みついて、周囲も当事者たちも修繕することも断ち切ることもできなくなっている。
ヒロインのジレンマもさながら、現状に強い問題意識を持ちながらも、しがらみで身動きが取れない『さんし船団丸』社長の片岡の描き方が興味深い。
初回のラスト、組合長から漁協を通さない魚の直販に脅しをかけられたヒロインに、普通ここは味方して二人で『巨悪』に立ち向かうだろうと思いきや、片岡は組合長相手に尻尾を巻いて、和佳が掛けた『魚の直販』という梯子をあっさり外してしまうのである。
このままではいけないとわかっているが、何から手をつけたらいいのか、義理や恩を損なわずに現状を変えていくにはどうしたらいいのか、下からは冷淡な目で見られ上からは押さえつけられて右往左往しているこの国のミドルの現状そのもののようだ。
結果、和佳が悔し涙にまみれながら、まるで手負いの獣が暴れるような激しい啖呵を片岡と組合長に浴びせかけて、戦いの火ぶたが切って落とされる。