【『ファーストペンギン!』感想5話】風穴をあけるんだ!・ネタバレあり
と言う祐介に、片岡は狼狽えてそれは迷惑だと言ってしまう。
「そねえな…お前…東京なら、あれかもしれんけど、そねえな訳分からんもん、ここん持ち込まれても困るんちゃ」
息子の生き方を理解したいと頭の半分では思いながらも、東京のような都会ならともかく、この地元ではそれは困ると、おろおろと言う片岡の言葉が生々しい。
魚の流通にしても、現状を変えねば未来が暗い、でも今起きるデメリットを受け入れたくない。
同様に、マイノリティへの理解にしても、理念の上ではわかっていても自分の身近な存在になると、理念より現実の不安が先に来る。
この物語は、総論賛成・各論反対になってしまう人々の綺麗ごとと矛盾を、人情味ある物語の優しさの中で容赦なく斬ってくるのである。
再び断絶しかけた片岡と祐介を繋いだのは、祐介のマイノリティとしての痛み多き人生を、父親として理解してあげてほしいと願う和佳の言葉だった。
保守的な価値観で生きてきた男には、それが通じる言葉で、実感できる情愛で語りかけていく。
年齢、性別、立場を超えて、パートナーとして成熟しつつある和佳と片岡の、この時の会話が印象深かった。
この関係性の成熟もスイッチが切り替わるようなものではなく、幾つかの衝突と解決を経たグラデーションだったのだと思う。