車内で泣き叫ぶ娘をあやす若い父親 その後の展開に「涙が出た」「考えさせられる」
迷惑にならないよう自分の胸に子供の顔をあて、なんとか寝かせ付けようとしているのか、少しでも泣き声のボリュームを小さくしようとしているのか、次第に赤ちゃんの声はかすれ、しゃっくりと嗚咽で心配になるほどだった。
ようやく大阪に着くアナウンスが聞こえた時には、今までで一番長い名古屋⇒大阪間だったと感じた。
きっと周囲も「やれやれ」と思ったに違いない。今ごろ泣き疲れて眠った子供と大きなバッグを抱えた若い父親が車両を出てゆく背中を、私は少し恨めしく見ていた。
その瞬間、まるで父親は車掌のようにクルっと振り返った。
そして、よく通る大きな声で
「皆様!お疲れのところ、またお寛ぎのところ、お騒がせしてしまい、大変申し訳ありませんでした!」
と、寝ている娘を抱えたまま頭を深々と下げたのだった。
私は予想外な光景に鳥肌が立った。すると、一番強面なスーツ姿の男性が「みんな一緒だよ。
気にするな」と慰め、次に他の男性が「このあとも頑張れよ」と励ました。そして車両内が拍手で包まれたのだった。
その同志感にすっかり乗り遅れた私は戸惑ったが、ホームを歩く親子の後ろ姿が見えなくなるまで心の中で祈り続けた。