2018年7月28日 06:00
負債10億円からV字回復…老舗旅館の若女将の「働き方改革」
うっそうとした森に「ドン、ドン!」と太鼓の音が鳴り響く。ここは神奈川県秦野市の鶴巻温泉にある老舗旅館「元湯陣屋」。平日の午後3時チェックインの時間が過ぎると、お客が続々と門をくぐり、そのつど従業員が迎え太鼓を鳴らして、おもてなしをする――。
「この“おもてなし”にもちょっとした工夫があります。担当者がピンマイクを通して『○○様がいらっしゃいました』と言った言葉は、瞬時に文字化されて従業員全員が持つタブレットに送信されます。そうすることで、スタッフは余裕を持ってお客様をお迎えする準備ができるのです」
そう語るのは、女将の宮崎知子さん(40)。女性ならではのこまやかなサービスで定評のある宿だ。元湯陣屋は大正7(1918)年の創業で、今年で100周年。
1万坪の敷地には露天風呂付きの18の和室がある。
東京から1時間足らずで小京都のような風情を体験できるとあって、1泊2食付き3万5,000円〜という料金にもかかわらず、平日でも満室になるほど。
いち早くITを導入し、’16年、週休3日制にしてからも、売り上げは伸び続けた。その経営手腕が評判になりメディアに登場することが増えてきたが、実は知子さんが女将になった’09年当時、旅館は倒産寸前だったという。