2018年7月28日 06:00
負債10億円からV字回復…老舗旅館の若女将の「働き方改革」
「実際にホテルチェーンが運営するホテルにも泊まってみましたが、コンセプトが陣屋に合うとは思わなかった。買収の条件もよくなかったので、それならば自分たちでやろうと、お盆休みのころには決めました」
富夫さんは会社に辞表を出し、同年10月1日から「元湯陣屋」の4代目社長に就任。知子さんは女将になった。旅館業の経験などまったくなかった2人。義母は入院中で仕事を教えてくれる人はいなかった。そこで、従業員と仕事をするうちに、旅館が抱える課題が見えてきたという。
「それまでは稼働率を維持するために宿泊料金を値下げしていたのですが、料理の質を高めながら、料金を少しずつ上げることから始めました。宿泊料金を上げるためにはサービスの質も上げなくてはなりません。
料理の炭を起こすだけの人、運ぶ人、お客様に出す人と、作業は分業制で効率が悪かったので、お迎えをしてから布団の上げ下ろし、食事を出して、お見送りするまで、1人がマルチでこなせるようにしました」
20しかない客室に対し、120人以上の過剰な人員を配置していたが、2つあった厨房を1つにして、料理を部屋出しからダイニングで食べるコースを設けるなど、作業を集約することで、従業員は40人程度に収めることができた。