2018年7月28日 06:00
負債10億円からV字回復…老舗旅館の若女将の「働き方改革」
「’08年に先代の義父が急死してから人生が一変しました」(知子さん・以下同)
というように、知子さんは大学卒業後、大手電機メーカー系列のリース会社に勤務。大学時代から交際していた同い年の富夫さんと’06年に結婚した。
「長男の夫は大手自動車メーカーにエンジニアとして働いていて、旅館を継ぐとは聞いていませんでした。私もエンジニアと結婚したと思っていました」
結婚の翌年、長男を出産、そして’09年8月、2人目の出産予定日の10日前、義母が知子さんの入院先に訪れたときのこと。
「義父から経営を引き継いだ義母も、体調を崩して別の病院に入院していました。外出許可を取ってわざわざ見舞いに来てくれたのですが、旅館の経営がうまくいっていないことを打ち明けられました。『借金は10億円に膨らんでいて、大手ホテルチェーンからの買収の話もある』という内容でした。まず私に打ち明けて、頃合いを見ながら夫に伝えてほしいと言われました」
夫がホテルチェーンとの交渉に参加したが、相手が提示した買取り額は、たったの1万円。
大正時代から続く旅館を手放すか、10億円の借金を抱えて再建するか、二者択一を迫られた。