2020年4月6日 11:00
生まれた娘は325g…“流産扱いの壁”乗り越え産んだ母の願い
「奈乃ちゃーん、今日はねぇ、取材の人が来てはるよ~。奈乃ちゃんのこと、いっぱいお話ししようねぇ」
幸田佑里子さん(42)はこういって、愛してやまない娘に語りかけた。でも、「奈乃ちゃん」と呼びかけられたまな娘がその声に応えることはない。ママの視線の先にあったもの、それは小さな、小さな骨壺だった。奈乃羽ちゃんが亡くなって間もなく1年半。ママは、小さな骨壺をいとおしそうに抱きしめた――。
一昨年の1月のことだった。テーブルに手をついて立ち上がろうとした瞬間、佑里子さんは自分のおなかの中から液体がこぼれ出る感覚がして、青くなった。
「すぐにトイレに駆け込んで、生理用品で押さえたんです。でも、ジャーッと流れ出る液体が、全然止まってくれなくて」
腹部に走る鈍い痛み。添えた手の中で、やっと少し膨らみ始めていたおなかが、みるみるうちにペチャンコになっていく。それはまるで、長年夢見たママになれるという希望まで、萎んでしまうかのようだった。3年に及ぶ辛い不妊治療の末、体外受精を経て授かった我が子。ところが、出産予定日までまだ3カ月以上というタイミングで破水してしまったのだ。
医師はこう説明した。