エリート医師が選んだ自給自足「マシーンから人になれたよう」
それでも、本間さんはアメリカで、充実した3年半を過ごす。その一方で、あの夜、芽生えた思いも、なかなか消えなかった。
「常識を疑って見るようになっていました。医療に関してもそう。西洋医学をガチガチに盲信していた自分自身の常識をまず、疑ってかかったんです。結果、西洋医学以外にも、人の健康に有意義な医療というのは無限にあるという確信に至りました。西洋医学にも素晴らしい面はいっぱいある。ただ、現代の医療は偏りすぎていると思えて仕方なかった」
帰国後。
同医大初のNIH留学を経験した本間さんならば、あと数年、研究を重ねていけば、教授も遠くはないと思われたが。
「私は医療とは西洋医学だけじゃない、と気づいてしまった。そのうえで、西洋医学だけに偏りすぎ、それ以外を認めないような世界で上を、教授を目指すべきか……、本当にとても迷いました」
やがて、本間さんは決断する。医大を辞め、さらに生まれ故郷・北海道から去ることを。「周りの人たちからは心配されましたよ。『頭がおかしくなったんですか?』って。あと、よく言われたのは『なにか宗教にハマったんですか?』とも(笑)」
そんな周囲の揶揄する声をよそに、本間さんは結婚したばかりの妻を連れ、しがらみのない栃木県に移住した。