2020年9月7日 11:00
「自死した夫との約束果たしたい…」40歳で弁護士になった主婦
浩介さんが突然の病いに倒れ、つらい闘病のさなかに自ら命を絶ってしまったのだ。佃さんは悲しみのどん底に突き落とされた。それでも、立ち上がることができたのは、最愛の人の遺志を継ぐと決意したから。
「夫が亡くなってから私には、記憶がまったくないんです。もちろんお葬式もきちんと出したはずなんですが、覚えてない。大切な人がいなくなったという喪失感で、今度は私の心が壊れちゃってました」
それから迎えた、四十九日の法要のとき。僧侶の読経が終わるころ、佃さんの脳裏に半年前の出来事がよみがえってきた。
「あれは、浩介さんが東京の病院に入院中のこと。
体調がいい日に外出許可をもらって、2人で病院の近くの公園を散歩したんです。イチョウの黄葉がとっても奇麗だったの、覚えてます」
夫の車いすを押していると、彼が不意に、こんなことを言った。
「司法試験、受けてみないか?」
「うん、いいよ」
とくに深く考えもせず、そう答えると、彼は振り返って「約束だよ」と、ほほ笑んだのだ。
「あれは浩介さんから私へのメッセージだったんだと思ったんです。彼との約束を果たしたい、彼の志を継ぎたいと。そこからはもう必死でした」