2020年9月7日 11:00
「自死した夫との約束果たしたい…」40歳で弁護士になった主婦
佃さんは司法試験を受けると心に誓った。とはいえ、このとき35歳。4人の子供を、しかも1人は乳飲み子を抱えた専業主婦が、簡単にできる決断ではない。
「もう何かにすがらないと、私自身、生きていけない、そんな思いでした」
次女におっぱいをあげながら、もう片方の手で教科書を開いた。子供が風邪をひけば、病院の待合室で問題集を解いた。こうして彼女は法科大学院を経て、3回目のトライで司法試験に見事、合格を果たした。最愛の夫の死から5年。佃さんは40歳になっていた。
「墓前に報告に行きました。『なんとか約束、果たせたよ』って。きっと褒めてくれてたと思います」
司法修習のときから、考えていた。40代、人よりもずっと遅れて弁護士になる自分に、いったい何ができるのかを。
「もしかしたら、私と同じ境遇の人たちのためなら、40年間の人生経験が、浩介さんと2人で頑張ったあの日々が、生かせるのではないか、そう思ったんです」
司法修習を経て、弁護士になった佃さんは、自死遺族支援弁護団に参加。自死で家族を亡くした人たちの救済に尽力している。そんな佃さんが最も危惧しているのが、現在のコロナ禍で今後、自死者が増えること。