イラクへ飛んだ日本人看護師「壮絶な痛みの中亡くなる子供が…」
これまで、さまざまな被災地を見てきて、戦争や貧困、経済、政治状況などが、とくに立場の弱い人たちの生命に影響を及ぼすと感じました。だから“看護師”という枠にとらわれず、さまざまなことを学べたらと思って」
金澤さんが言うように、イラクには、子どもたちが戦争の犠牲になって亡くなっていく痛ましい現実があった。なかでも印象に残っているのは、当時9歳だったオマルくんという男の子のことだ。
「オマルくんは住んでいた町をイスラム国に攻撃され、多くの人が殺されていく姿を目の当たりにして、心に深い傷を負っていました。家族とともに別の町に避難していた矢先、がんが発生。手術は受けたものの完治はせず、下半身は麻痺している状態でした。泣きだしてしまうほどの痛みが襲ってくることもあるけど、緩和ケアのための医療用麻薬は使えない。イスラムでは宗教上の理由から、麻薬を使うことに抵抗があるからです。
それでも彼は、私たちに心配かけまいと、『大丈夫、元気だよ!』『ありがとう!』と、あふれんばかりの笑みを向けてくれるんです」
しかし、懸命に痛みに耐えても、助かる命は少ない――。
そんな状況のなか、金澤さんがイラクの現地スタッフに繰り返し伝えていたことがある。