靴磨き歴50年のおばあちゃん“指紋が消える”ほどの仕事の流儀
昔は世間話が続いて、そこに次のお客さんも来て3人でお喋りしてたり。今の人は、気持ちにゆとりが足りないように感じます。女の人も増えました。革の長いブーツも同じ500円。私も働いた経験があって女性の職場での大変さはわかるから、頑張ってる人から多くは取りたくないのよ。
ここで靴を磨いたあとに宝くじが当たったと言って、お礼を持ってきた人もいたけど、私は受け取らなかった。自分が食べていく分とネコの餌代があれば十分。靴磨きで頑張ったおかげで、もうお墓も買ったから」
この7月で90歳。
3年前の自転車事故で右足には人工骨も入っており、座るのもラクではないが、仕事は続けるときっぱり言う。
「母が102歳まで長生きしたの。だから私も、まずは100歳を目標に靴磨きを続けます」
道路使用許可などの制限もあり、消えゆく運命にあるという路上の靴磨き。新橋に行けば、まるで街の景色の一部のようにして、わが国最後の女性靴磨き職人が、疲れたサラリーマンやОLを迎えてくれる――。
(撮影:田山達之)
「女性自身」2021年4月20日号 掲載