念願の青春を手にした“81歳の高校生”人生で初めて夢を持てた
でもある。戦後の混乱期に始まった夜間中学は当初、経済的理由で働かねばならず、学校に通えなかった人たちのための学校だったが、70年代に入ると、差別や貧困で通学できなかった在日韓国・朝鮮人の入学者が増加。日中国交正常化に伴う中国からの帰国者も多数、通った。
90年代に入ると、仕事などで来日した外国人の入学者が急増。現在は約8割が外国籍の生徒で占められ、最近では、時代を反映して、いじめなどで不登校になった生徒や、ヤングケアラーとなり学べなかった人たちが入学するケースも増えている。
村田さんが入学した当初の中学校の校舎は、建て替え前の木造だった。
「ギシギシと音がする渡り廊下で、望遠鏡で夜空を眺めている社会の先生がいたんです。授業を終えた私たちが通りかかると、『見てみるか』と言ってくれて。
私ものぞかせてもらいました。
お月さま、お星さまがきれいに輝いてて、手を伸ばせば取れるかと思うほどで。ほら、私、休みなく働きづめで、星が出る時刻なんて、もう疲れきっていて。星空なんか見上げたこともなかったやろ」
村田さんはうれしそうに目を細めた。
「ああ、お月さまやお星さまがきれい。私はようやっと、こんな夜空を眺める生活ができてるんやなぁって思ってねぇ。