2021年12月5日 06:00
89年間ゲイを隠して西成へ カムアウトし見つけた「家族」たち
「僕がな、女性の役を演るのは、性に合ってるのよ」 じつは、長谷さんは同性愛者だ。物心つくころには、男性として生まれた自分の体に違和感を覚えていた。初めて好きになった人は、小学校の男性教諭だった。
「僕はな、中途半端なんや。男は男だけど、男になれない。半分男で半分女、そういう生活をひとりで、ずっとひとりでしてきたのよ」
本人の言葉は少し寂しげに聞こえるが、少なくとも現在の長谷さんは、寂しくもないし、孤独でもない。
長谷さんと、むすびとの出会いは3年前、18年の夏だった。
「当時住んどった東大阪に、むすびが紙芝居劇をやりに来たのよ。
見たらな、5~6人が役柄決めて演っていて。『ちょっと変わった紙芝居やな』と。しかも、けっこうな年の人らが、文句言い合いながらも、何に縛られることもなく、何やらとっても楽しそうで。あぁ、これやったら、僕もいけるん違うか、そう思ったのよ」
自分も参加したい、という思いが募った。ここならありのままの自分をさらけ出せるのではないか、そう思えたのだ。
その日のことをむすびのメンバー・ハルさん(71)は鮮明に覚えていた。
「終演直後、客席にいた長谷さんが前に出てきはって。