2022年3月11日 11:00
夫・椎名誠も舌を巻く“冒険家”で作家の渡辺一枝さん「チベットの鳥葬に父の最期を重ねて」
それは、神秘の国“チベット”だ。
「“チベットさん”というあだ名が付くほどでね(笑)。当時はチベットに関する情報なんてほとんどない時代でしたけど、なぜかたまらなく魅力的に感じたんです」
そんな秘境へ憧れる気持ちが、運命の人、椎名さんとの縁を結ぶことになる。
「友人から、『おもしろいやつがいる』と紹介されたのが椎名だったんです。当時からチベットや中央アジアに夢中だった私は、幻の王国と言われる“楼蘭”の話をしたの。そしたら唯一知っていたのが椎名でね(笑)。それで盛り上がって。そういう本をたくさん持っている、と言ったら、じゃあ読みたいから君のうちに行っていいかと。
それでお付き合いするようになったんです」
3年ほどの交際を経て、23歳で結婚した一枝さん。頭を悩ませたのは仕事と家庭の両立だった。
「当時、勤めていた建築事務所は、寿退社が当たり前。私は、就職してわりとすぐ結婚したので、しばらく勤めていたんだけど、妊娠がわかって。この職場では長く働けない。どうしようか、と悩んでいたんです」
そんなとき、手を差し伸べてくれたのが同居していた母だった。
「じゃあ、この家を建て増しして、ここで保育園をやりましょう」