くらし情報『作家・渡辺一枝さん「3.11後の福島で見た『ふるさと』の喪失」』

2022年3月11日 11:00

作家・渡辺一枝さん「3.11後の福島で見た『ふるさと』の喪失」

道具もないなか木を倒して抜根して。子どもたちも学校を休んで手伝っていたと聞きました」

原発事故前まで津島には、自然の恵みとともに生きる豊かな暮らしがあった。

「だから住民たちが裁判で、『満蒙開拓で国に裏切られ、帰ってきて祖父母が苦労して切り開いてきた土地を、また国や東電に奪われた。ふるさとを元に戻せ!』と、訴えているのを聞くと胸が痛い。戦争も原発事故も、国策で進められ、人生を翻弄して破壊するという点で同じなんです」

時の流れは残酷だ。被災地に通うようになって11年、福島でできた多くの友人たちを見送った。

「南相馬で高齢者のシェアハウスを造ろうとしていた藤島昌治さん、飯舘村の長泥地区で石材業を営んでいた杉下初男さん、同じく飯舘村の元酪農家、長谷川健一さん……。みんな私と同世代か若いくらいです」

一枝さんは以前から、「人は病気で死ぬのではない、寿命で死ぬのだ」と考えてきたが、福島の友人たちの死はそう思えない。


「放射能のせいか故郷をなくした心労かわからないけど、“断ち切られた命”だと思えてしまう。原発事故さえなかったら、と」

■子どもたちがルーツを探す日のために記録し続ける

「みなさん、できれば一度福島に足を運んで、ご自身の目で見て、肌で感じてみてください」

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