2022年3月11日 11:00
作家・渡辺一枝さん「3.11後の福島で見た『ふるさと』の喪失」
2月20日。聴衆にそう語りかける一枝さんの姿があった。東京で開かれた「トークの会 福島の声を聞こう!」の会場でのことだ。
「私のフィルターを通さず、福島の人たちの言葉を直接聞いてほしいと思ってはじめた会なんです」
39回目となるこの日のゲストは、南相馬市在住の高村美春さん。震災と原発事故を語り継ぐために県が設立した「東日本大震災・原子力災害伝承館」で“語り部”をしている女性だ。高村さんは語る。
「福島は、ニュースで伝えられているように“復興”しているわけじゃないし、かといってみんな悲しみに暮れているわけでもない。人それぞれで、いろんな側面がある。
一枝さんは、そんな福島で生きる一人ひとりの物語を、語り部となって伝えてくれる人です」
そんな一枝さんが懸念しているのは、“復興”の名のもと、ふるさとが作り変えられている、こと。
「里山を削って別の場所に丘を造ったり、削った跡地をパークゴルフ場にしたり……。地形自体が変えられているんです。私自身、戦後60年以上たって自分の生まれた(旧・満州ハルピンの)家を探し出すことができたのは、建物は変わっても地形が変わっていなかったから。でもその後、中国全体、チベットもどんどん作り変えられている。