2022年10月23日 06:00
91歳、現役介護看護師の74年間 利用者と目を合わせ、話に耳を傾け、肌を合わせる
「患者さんが、退院しても、ご自宅で家族と共に潤いある生活を続けられるようケアをすることが大事。そのために何ができるやろうか」
こうして細井さんの提案で、訪問看護がスタートする。国内でも先駆けとなる取り組みだった。
「自宅で療養する患者さん宅を訪ねて、おむつを替えたり、パート勤務の奥さんが作っていったおにぎりを食べさせたり。
当初は無料で、やがて車代の500円だけいただきましたが、なかには、『なんで看護婦にお金を払わんといけんのや』と言うご家族もいらして」
しかし、3週間もすると家族の対応もガラリと変わり、そして、こんな言葉をかけられるように。
「お医者の先生より、看護婦さんが来たほうが、よっぽどええわ」
そうした声に後押しされ、細井さんたちのグループは、当時の厚生省へも何度も出向いた。
「まだまだ訪問看護や老人施設に対するバックアップは足りませんでしたから、もっと体制を整えてほしいと談判しました」
そして、’86年には老人保健施設の制度がスタートする。
「すでに始まっていた高齢化社会で、どんな介護が求められるかを考え、リハビリや医療ケアをより充実させて高齢者の在宅復帰を促す施設を目指しました」