2023年6月11日 06:00
アフリカに「医」を届ける医師 内戦スーダンの村人たちとの交流秘話
しかし──。
「医師の国家試験の結果は6月に発表されるんです。“もし、ここで不合格なら、家族を路頭に迷わすことになる”と、相当な恐怖感がありました。無事に合格できましたが、いまだに試験に落ちた夢を見たりするんですよ」
こうして川原は外科医として医師人生をスタートさせたのだった。
「とにかく患者さんがたくさんいて、家に帰れませんでした。いつもパジャマ姿の女房しか見られない。久しぶりに早くに帰って佳代の手料理を食べようと、箸を持った瞬間にポケットベルが鳴って、病院に戻ったこともありました」
大きな転機は98年、大学にタンザニアへ赴任する外務省医務官の公募があったことだ。
「卒業してすぐに結婚したので、新婚旅行にも連れていっていませんでした。
海外にも行ったことがなかったので、チャレンジしたくなったんですね」
とはいえ、行き先は日本人になじみの薄いタンザニア。佳代さんが当時を振り返る。
「“えーっ!?”って(笑)。でも、そのときわが家には5歳と3歳の子どもがいたから“絶対にうちは選ばれないはずだ”と思って、たかをくくっていたんです。でも、応募したのは2人で、のちに1人は辞退。結局うちが行くことに。