孤独な遺体を受け入れ続ける夫婦2人だけの葬儀社の覚悟「身寄りがない方も私たちがお見送りします」
私ら葬儀屋は送る手伝いをするだけ、あくまでも主役は、ご家族なんです」
初仕事から1カ月ほどたった夏のある日、別の市営住宅で息を引き取った男性の葬儀を引き受けた。その打ち合わせのなかで、故人の弟から「兄は生活保護を受けていた」と打ち明けられる。
「『それが、なにか?』というのが最初の率直な感想。というのも、私も夫も福祉葬、生活保護を受給している人の葬儀は、それまでやったことがなかったからなんです」
「福祉葬」とは、喪主が経済的に困窮状態にある場合や、故人に葬儀代を払える身寄りがない場合に、国が費用を肩代わりし、最低限の葬儀が行える制度。生活保護法でも「葬祭扶助」として定められている。葬儀形式は火葬のみを行う直葬に限られ、費用には自治体ごとに決められた上限額がある。
以上のような説明を、市役所の担当者から聞いたきみ子さん。そもそも、小規模で安価な葬儀を執り行うことを目的に起業した自分たちにも、ここにビジネスチャンスがあると考えた。
「いわき市ではそれまで、主に全国チェーンの葬儀社さんが、福祉葬を担っていました。でも大手にとっては、あまりもうかる葬儀ではないので、多くの場合、上限額いっぱいの見積もりを出していたと思います。