子宮・卵巣を全摘出、脳に腫瘍…大病の末に北新地放火殺人事件で兄を亡くした伸子さん
スマホのニュースに「西梅田の心療内科で火災発生」と出た。
まさかと思って開いたニュースの写真には、兄のクリニックの窓が写っている。慌てて店を飛び出し、タクシーで現場に向かった。
「パニックで、兄のところへ行きたいと、それだけしか頭にありませんでした」
渋滞がひどく、最後は徒歩でクリニックに向かったが、すでに規制線が張られ、ものすごい数の消防車が現場を取り囲んでいた。
義姉(弘太郎さんの妻)も駆けつけていたが、被害者は全員、複数の病院に搬送された後だった。
「結局、家で待つしかなくて。夜の10時でした。母から電話で、『お兄ちゃん、亡くなりました』と告げられました」
夫と両親、義姉と伸子さんの5人で警察署に向かった。
「車の中では誰も話をせず、泣くとか、取り乱すとかもなかったですね。あまりにもショックが大きく、泣くことすらできなかったと思います」
遺体は別の警察署の駐車場の奥に置かれていたという。
「袋に入った兄と対面しました。父は涙を浮かべ『よう頑張ったな』と、兄に声をかけていました」
死因は一酸化炭素中毒だった。
「やけどもなくて、顔も眠っているようにきれいな状態でした。