認知症の実母モチーフに作品撮った映画監督が語る「家族」
生真面目で勤勉な人に発症が多い傾向があり、病気が進行すると、できないことが増え、徐々に寝たきりになっていくという。
「私は、どこか母の病気を面白がっているところもあるというか。私も幻視を見てみたいって思うんですよね」(熊谷さん・以下同)
城医師によれば、レビー小体型認知症患者と接する際に大切なことは「受容と共感」だという。それが患者自身の幻視に対する恐怖を軽減してくれる。幻視を面白がることで、母の病いを受け入れようとする娘を、幸子さんはいとおしそうに見つめていた――。
熊谷さんは34歳のときに映画学校ニューシネマワークショップに参加。そこで監督した短編映画が若手監督の登竜門「ぴあフィルムフェスティバル(PFF)2005」で賞を獲得。翌年は自主制作作品『はっこう』でPFFグランプリを受賞した。
以後も国内外の映画賞に輝き、高い評価を得てきた。だが、短編映画でどんなに評価されても、映画監督としては認められないのがいまの日本だ。
「たとえPFFでグランプリを取っても、なかなかその先にある長編映画、商業映画の世界には進めないんです」