2018年4月21日 11:00
芥川賞作家・若竹千佐子「家族に尽くす人生で幸せにはなれねぇの」
おめとおらは最後まで一緒だがら」
「あいやぁ、そういうおめは誰なのよ」
「決まってっぺだら。おらだば、おめだ。おめだば、おらだ」
頭の中から彼女の本音とも思える東北弁が次々にあふれ出し、本体の桃子さんと、脳内の声たちが、ああでもない、こうでもないと、かしましい議論を交わすのだ。たくさんの声の主たちを、若竹さんは小説で「小腸の内壁に密生した絨毛突起のよう」と表現する。
「絨毛突起は、本当にあるのかもしれませんね(笑)。私にも実際に、いろんな声が聞こえるんです」(若竹さん・以下同)
単行本は、すでに50万部を突破。賞の審査員を務めた先輩作家らをうならせ、数多の読者のハートをつかんだ若竹さんのデビュー作は、ミリオンセラーへの道をひた走る。
「いまもね、頭の中で『いがったな~』って声が、たくさん聞こえていて(笑)。
でも、同時にね、『おだづな!』とも言われてる。『おだづな』って、わかりますか?遠野弁で『調子にのるな』って意味です(笑)」
若竹さんは’54年、桃子さんと同じく、東北は岩手県遠野市で生まれた。