2018年4月21日 11:00
芥川賞作家・若竹千佐子「家族に尽くす人生で幸せにはなれねぇの」
本を読むのが大好きだった子ども時代。図書館のたくさんの本が並ぶ書棚に、自分が書いた本も1冊加えたい。小説家になりたい。それが夢だった。
「でも、どうやったらなれるのかもわからないし、小説でご飯が食べられるなんて、とてもとても思えなくて」
若竹さんは教師を目指すことにした。先生をしながら、小説は余暇に書けばいいと考え、高校卒業後は岩手大学教育学部に進学。しかし、6度の教員採用試験に落ちてしまう。打ちひしがれた若竹さんに、思わぬ展開が待っていた。
結婚だ。
「父親が『すごくいい男だぞ』と見合い話を持ってきて。それまで、私はモテたためしも一度もなく、誰ともお付き合いをしたこともなかったから。『おおっ!?』と思って(笑)、会ってみることにしました。本当にいい男だったんです(笑)」
見合い相手は3歳年上で、父親が経営する会社を手伝っていた和美さん。見合いから半年後に結婚。若竹さん28歳の春だった。新婚生活は遠野で始まった。
長男を授かったが、若夫婦は故郷での暮らしに息苦しさを覚え、’85年に家族は上京。世はバブル景気。