2018年4月21日 11:00
芥川賞作家・若竹千佐子「家族に尽くす人生で幸せにはなれねぇの」
不惑手前の若竹さんは、寂しさの答えを求め、近所の図書館に通うようになる。そこで心理学や女性学の本に出合い、むさぼるように読んだ。
「自分が抱えている寂しさの意味を知りたかった。それで河合隼雄さんや、上野千鶴子さんの本を読んで、わかったことや気づいたことを大学ノートに書き留める、そんなことを、当時からいままで、ずっと繰り返してきました」
大学ノートは、数えきれないほどに積み上がっていった。
「私の心根の中に『わかりたい』という気持ちと『わかったことを、面白おかしく表現したい』という強い気持ちがありました。その2つができれば、私は満たされるということが、だんだんわかってきたんです。図書館で読んだ本の中身を私の中に取り込んで、私の血肉にしたい。そして、今度は自分の言葉で表現したい。
それはつまり、やっぱり小説を書きたいということだった」
試行錯誤を繰り返し、やっと書きたいテーマが見つかってきた。本腰を入れて小説に取り組みたいと考え始めたちょうどそのころ――57歳の若さで夫・和美さんが急逝する。
「やっぱり寂しいですよ。