劇映画でしか描けない“真実”。『テッド・バンディ』監督が語る
とバリンジャー監督は振り返る。ドキュメンタリー企画はNetflixで配信中のミニ・シリーズ『殺人者との対話:テッド・バンディの場合』に結実し、映画『テッド・バンディ』も完成したが、監督は「両方を同時に進めたことで、それぞれの作品の目的を明確に見定めることができた」という。
「ドキュメンタリーは“何が起こったのか?”を真実に沿って包括的に描き、バンディ自身の言葉を通じて殺人者のマインドに深く潜り込んでいくような作品にしたいと考えました。しかし、同じことを映画でやるのは無理です。物語の枠にドラマを圧縮するにはあまりにも情報が多すぎますし、仮に俳優がバンディら実在の人物を“マネ”をしたとしても、本人の記録映像より興味深いものにはならないでしょうから」
そこで、監督は“コインの反対側”に視点を移すことにした。つまり、事件の被害者のドラマだ。「ドキュメンタリーが“真実”を描くとしたら、映画では“エモーショナルな真実”を描き、事件の被害者の主観的な体験を掘り下げようと思いました。ですから、私たちはあえて映画の前半部でバンディのことを“信頼できる人物”として描いています。
そうしなければ、被害者の感じたことを観客の方に体験してもらえないからです。