劇映画でしか描けない“真実”。『テッド・バンディ』監督が語る
この事実を描くことは私たちにとってツラいレッスンかもしれません。でも、これらのすべては先入観と誤解から生じているのです」
リズは信じている。テッドは優しい人物で、そんな悪いことをする人じゃない。テッドの正体を知っているあなたはリズを愚かな人間だと思うかもしれない。でも、それはあなたが客席で、安全圏から物語を観ているからで、リズと同じ立場に立った時、あなたは信頼する人間が“極めて邪悪で衝撃的に凶悪で卑劣”な人間だと見抜けるだろうか?
「この映画のプレミア上映のあと、娘たちと車で帰宅しながらいろいろと話したのですが、娘から『パパ、この映画は“誰のことも信頼するな”って言ってるの?』と質問されました。私は“そうじゃないよ。でも誰かを信頼することで危険な状況に置かれてしまうことがあるんだよ”という話と、“だからこそ相手にとって信頼してもらえるような人間になるのが大事なんだよ”という話をしました。正直に言いますと、親としては難しい問題です。
私だって若いころに海外に長い旅行に出て、そこで出会った人に優しくしてもらったり、一生続くような友人に出会ったりもしてきました。でも、娘には“簡単に人のことを信頼しちゃダメだよ”と言ってしまっている。