劇映画でしか描けない“真実”。『テッド・バンディ』監督が語る
こんな風に観客の感情を操るような手法はフィクションだから可能なわけで、ドキュメンタリーではしてはいけないことです」
リリー・コリンズ演じるシングルマザーの女性リズはある日、バーで素敵な男性テッド(ザック・エフロン)と知り合う。笑顔が素敵で、優しくて、家庭的で、ひとり娘のモリーのことも受け止めてくれるテッドとリズは恋に落ち、幸福な日々が始まるが、ユタ州をドライブしていたテッドはスピード違反で逮捕されたのをきっかけに誘拐未遂事件の犯人だと言われてしまう。自分は無実だと訴えるテッドと、優しくしてくれるテッドが凶悪犯だとは信じたくないリズ。やがてテッドには次々と容疑がかけられていき、事件の行方は法廷にゆだねられる。
この記事の冒頭に書いた通り、私たちがテッド・バンディが何者なのかを知っている。しかし、リズにとってテッドは愛すべき、信頼すべき恋人だった。「この映画は先入観と誤解にまつわる作品だと言えるかもしれません。私たちは、連続殺人犯は“モンスター”のような存在で、自分とは遠い場所にいると考えがちです。
しかし、実際の悪人はモンスターではなく、簡単に見極められるようなものではありません。25年に渡って犯罪ドキュメンタリーに携わってきた経験から言えることですが、犯罪者は“絶対に悪いことはしなさそう”と思える人や、私たちが信頼を寄せている人間だったりします。