[2020年映画興行総括] コロナ禍の1年。映画興行は『鬼滅の刃』の年だった。が、それ以上に洋画不在の年となってしまった。『パラサイト』で好調な出だし、だったのだが…。
そんななか、『ストーリー・オブ・マイライフわたしの若草物語』が、6月12日から公開された。映画館再開後の全く興行の見通しが読めない時期である。これは、配給会社の大英断であった。本来なら100スクリーン以下となるだろう本作は、スタート時、何と300スクリーンでの公開規模となった。その時点では、作品の数が限られていたから、映画館側からオファーが相次いだのである。
ただ、興収は3億4千万円にとどまった。残念ながら、やはり限定劇場マーケットの枠を超えられなかったと言えようか。宣伝費も抑えられていたから、悪くはないのだが、コロナ禍は、興行に明らかな影響を与えていたとは言える。
スタジオジブリの旧作の健闘を経て、邦画の大ヒットが7月に2本登場したが、洋画はほとんど音なしだった。米国や欧州で感染が広がっていくなか、公開延期がさらに相次ぎ、それは日本でも同じことだった。『ムーラン』など、いきなり配信される作品も登場し、8月21日公開のピクサー『2分の1の魔法』が苦戦するなか、あくまで映画館にこだわりを見せたクリストファー・ノーラン監督の『TENET テネット』が公開されたのが9月18日だ。映画館で映画を見ることの醍醐味が、この国の人々にある程度届いたのだろう。