迷い込んだ世界で妻が“別人”になった理由とは? 『ラブ・セカンド・サイト』監督が語る
本作もまた、成功によって自分本位になってしまった男が、別の世界で人生を選択しなおそうとする物語のように見える。しかし、この映画ではラファエルの選択だけを描かない。彼は冴えない教師になった段階から、あらゆる選択をやり直すが、“自分の選択”だけではなく、自分以外の人間の選択も人生や運命にとって大きな存在であることに気づいていく。
「そうなんです。この作品は結果的に運命というテーマを扱うことになりました。運命とは一体、何なのか? 運命をどのようなものとして捉えるのか? それを映画だから描けると思っていました。現実の世界では時間を逆行したり、未来に行くことはできませんが、映画ならば可能です」
だからこそジェラン監督は、別の世界にいるオリヴィアを単に“自分=ラファエルのことを知らない女性”ではなく、“まったくの別人”として描くことにこだわった。新しい世界にいるオリヴィアはラファエルのことを知らないだけでなく、食べ物の好みも考え方も違う別の女性として描かれる。
「それこそがこの作品のテーマそのものなんです! この映画の原題は“私の知らない人”です。“私の”は英語でいうところの“my"なので、私の妻とか、私の恋人みたいな使われ方をするのですが、その人は未知の人間なんです。