迷い込んだ世界で妻が“別人”になった理由とは? 『ラブ・セカンド・サイト』監督が語る
これはとてもパラドキシカルで矛盾していますよね。だからこそ面白いと僕は思ったんです。この映画でラファエルが改めて出会ったオリヴィアは彼の妻ではありません。しかも、彼の知っているオリヴィアではなくて、ピアニストになる夢を叶えた女性です。そこでラファエルは“自分は別の世界に来てしまって悪夢みたいだ。早く前の世界に戻りたい”と思っている。
でも彼は少しずつ“もしかしたら、オリヴィアにとっては今の世界の方が幸せなのかもしれない”と思うようになるわけです。つまり、彼女のことを想うことこそが愛なんじゃないかと。
自分を犠牲にしても相手の幸せを想うことが大事なんだとラファエルはもがきながら理解していくわけです」
ラファエルは、新しい世界の別人のオリヴィアに接近し、距離を縮めていく。ここで彼女と恋に落ちることができたら、彼は元の世界に戻ることができるかもしれない。しかし、彼はそのことが本当に正しいことなのか、ふと立ち止まって考える。映画のラストでジェラン監督はセリフを一切使うことなく、音楽と映像だけでラファエルの心の動き、その変化、最後の決断を描き切った。
「映画のクライマックスではショパンの『幻想即興曲』をカットしないで使うことにこだわりました。