綾野剛が見た一筋の光「息苦しくなったら、空を見上げてみればいい」
あそこにすべてが込められていて。豪士も紡も、変化を選択していい人間じゃないと思って生きているんです。ふたりは圧倒的に底辺。だからこそ理解し合えた、愛華ちゃんという人物を通じて」
私たちが生きる社会にも、豪士や紡のような人はいる。真面目に生きようとしているだけなのに、集団からはじき出されて、まるでいないものとして見なされている人が。そんな孤独の淵に立たされている人たちの存在に、私たちは気づいてあげなければならない、と綾野剛は声をあげる。
「豪士だけじゃなく、紡も、佐藤浩市さんが演じた善次郎も、ただただ罵声を浴びせられて、それをひたすら受け止めているだけ。そういう人って身近にいると思うんです。
だから僕は、まずそういう人たちの存在に気づいてあげたいし、抱きしめてあげたい。まっとうに生きている人たちが、誰からも見つめられていないと感じるなら、僕がその人を見つめてあげたい」
抱きしめてあげたい。その言葉は、豪士を演じる上で重要なキーワードだった。劇中、一部、スタントを用いる危険なシーンが含まれているのだが、そのとき、綾野はスタントを務めるアクション部の俳優にこんなお願いをした。
「手を広げて倒れるような、そういうお芝居はやめてください、とお願いしました。