ともすると、男性の理想が凝縮した聖母になりかねないキャラクターだ。だけど、有村架純が演じると、不思議とそうはならない。そこに、有村架純の知性と感性が光っている。
「ちょっとニュアンスを間違えると、何でも受け入れてあげるよみたいなキャラクターになっちゃうなと思ったので、そこは徹底して気をつけました。意識したのは、距離感。ちひろさんは、そんなに人に興味がないんです。悟っているというより、何もかもあきらめていて、そこからさらに1周回ったような人。だから、とてもからっとしている。
距離感に粘度を感じないというのは今回特に気をつけたところでした」
かつての自分のような行き場のない子どもたちを目の前にしても、ちひろさんには押しつけがましさのようなものがまるでない。
「決して自ら踏み込んで手を差し伸べるという人ではないんですよね。私たちも生きていたら、この音楽に救われたとか、この絵に救われたとか、存在してくれているだけで力をもらえるものってあるじゃないですか。ちひろさんもそれに近い感じがしました。サービス精神で何かを分け与えようとしない。ただそこにいることで、周りが救われている。そういう人なのかなって」