だからだろうか。有村架純の演じるちひろは、どこか翳りを持ちながら、過度に明るくもなく、湿っぽくもなく、海辺の街に吹く風のように、人々の生活に溶け込み、そして通り過ぎていく。
「きっとちひろさんもかつては普通の会社員で、普通にみんなと変わらないような生き方をしていたと思うんですね。でも、あるとき、自分が愛情に飢えていた分、人にいっぱい愛を与えすぎて、カラカラになってしまって疲れちゃったのかな、と。そこでちひろさんは、自分にとっていちばん気持ちのいい人との距離感を学んだ。もっとここにいたいと思う前に、もっと情が沸く前にさよならした方が自分自身も傷つかなくてすむ。期待をしなければ、裏切られたという気持ちにならなくてすむ。今の彼女の生き方は、全部ちひろさんが自分自身を守るために決めたものなんですね」
それは、人によっては淋しい生き方に見えるかもしれない。
だが、有村架純はきっぱりとこう言う。
「決して彼女は過去を捨てているわけではないんです。何か無理矢理蓋をしたという感覚もなかった。ただ、過去を引っ張らずに生きているだけ。いろんなことを消化して、今に至ってるような気がするし、私は最後まで観て、これからのちひろさんの旅を見てみたいって思いました。