2023年9月18日 12:00
世界的なシティポップ・ブームの原点的作品を数多く手がけた林哲司インタビュー「今の方がいい曲を書くと思いますよ(笑)」
特にアレンジは、言ってしまえば曲に着せる大切な洋服のようなものですから、そこが唯一当時の若い人間が任せてもらえる場所だったんです。アーティストになりたかった自分が、決して望むような方向ではなかったけれど、それを月に何本かやれば、とりあえず音楽で食べていける。だからどんどんそっちの方向に向かっていくことになるわけです。79年に竹内まりやさんの「September」と松原みきさんの「真夜中のドア 〜stay with me」がリリースされて、ようやく自分の音楽が作曲という形になったわけですけど、なのでそれまではアレンジャーとして音楽の現場でいろいろと学ばせてもらったという感じですね。こうやって振り返ってみても、絶対に作曲家になりたくてなったわけではなかったんですけど、自分の歩みとしては必然的なものだったのかなという気がしますね。結果として導かれてしまったというかね。
――竹内まりやさんや松原みきさんは、それまでの歌手と何が一番違ったんですか?
それまではポップスを歌う歌手が、ポップスで育った歌手ではなかったんですね。ジャズを歌っている傍らで歌謡曲やポップス歌謡をやっているとかっていう歌い手さんは何人かいたんです。