大東駿介×浅野和之 日本初演『What If If Only―もしも もしせめて』は夜、寝る前にふと思い出す芝居
また、演出家とともに翻訳の広田敦郎さんがずっと稽古場にいてくださるのも心強い。一つひとつの解釈を、僕たちがどう理解して、どう日本語の台詞に作り直すかを緻密にやってくださいます。贅沢な稽古場ですね。
浅野そうだね、翻訳の広田さんがいてくれるのはとても助かっていますね。
明日を生き抜く一歩を感じる作品
――大東さんが演じるのは“某氏”、浅野さんは“未来”そして“現在”を演じます。役柄の解釈にしても難解ですね。
浅野大東君のほうは、生きている人ですね(笑)。大東生きている人ですけど、おそらく大切な人が亡くなり、悲しみの中にいて先に進めずにいる人です。
浅野私は別個の人物のように見えるけれど、本当はこの某氏の中に存在している人物なのだろうなと。最初は未来として、後に現在として彼に相対し、導いていく。要するに、大切な人を亡くした喪失感の中で、自問自答したり苦しんだりしているところから抜け出す手立てと言うのかな。結局は、彼自身が自分で抜け出そうとしているから、私が現れたんだと思うんだけどね。
大東その苦しみの視点が、僕という主観から飛躍して突拍子もない世界情勢の話になるわけではなく、僕らと同じように日々大切な人を思いやったり、ニュースで社会のことを知ったりする、そうした彼の感性の中、情報の中で成立しているところがキャリル・チャーチル素晴らしいな!と。