【特集・沢村一樹さん】建築家・谷尻誠さんと語る、住まいと暮らしと仕事のこと(前編)
だから、自分のわがままさとお施主さんの要望が入り混じっていないと、自分の作品じゃない感じがするんです。
沢村さん:そこが、谷尻さんの個性にもなっているんでしょうね。
谷尻さん:ある種、そうかもしれませんね。言われたことだけをかなえるのであれば、僕に頼まなくてもいいわけじゃないですか。
沢村さん:それは、役者も一緒ですね。監督に言われたことを聞いてセリフを言うだけなら、僕じゃなくてもいい。だから、「俺の言う通りに、この台本通りにやってくれ」という監督とは仕事はしない(笑)。
谷尻さん:機械的なのは難しいですよね。
もどかしい中、何とか出来上がることに意味があるわけで。
沢村さん:確かに、“共作”にならないと意味がないですね。
谷尻さん:お施主さんとの会話の何気ない一言がアイデアの種になって、「おかげでこれができました」ってなることも多々ありますよ。
沢村さん:そういうときに完成したものって、何か楽しいですよね。
谷尻さん:全部思い通りになると、つまらないですもんね。
沢村さん:何か、妥協して受け入れている自分が好きなときもあるし。
谷尻さん:結局、人は負荷がないと成長しないんですよね。