が来宅する。食事の席での冗談めかした会話は、次第に各々の人種にまつわる話題へと移り始め……。
大河ドラマ『真田丸』でも、無邪気さと残酷さを併せ持つ豊臣秀吉を演じて高い評価を得た小日向だが、その陰影に富む役作りは本作でも健在。幼少期の「クソのような境遇」から、努力と実力で現在の社会的地位にまで上りつめたアミールが、封じ込めたはずのコンプレックスと葛藤におびえるさまが痛々しくも切ない。そんな彼のトリガーとなるのが、安田扮するアイザックだ。美術館のキュレーターだが、絵を値踏みするような口ぶりはニューヨーカーらしいスノッブさ。だが絶対的な“美”への服従は芯にもっている人物像が伝わってくる。同じように高い知性を持ちながらも、出自への迷いが拭いきれないアミールと、出自を受け入れ苛立ちを明確にするアイザックとが対峙するシーンは、息詰まるような緊張感で見応えがあった。
美人で頭がよく、才能も思いやりもあるエミリー役の秋山と、褐色の肌に腰高のスタイル、強い眼差しをもつジョリー役の小島は、共にハマり役。アミールとアイザックはもちろん、エミリーとジョリーもそれぞれの夫とぶつかり合い、日常の瑣末な物事に対する反応を細かく積み上げていくことで、この世界観の"体温"に説得力が出た。