をやります」と返事をしてしまいました」。
コロナ禍に翻弄される演劇主催者たちへのエールもあっただろう。
禁断の愛を描いたワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」のピアノ版をポイントで用いる。日生劇場の広い舞台へ、たった3人の登場人物を目いっぱいの間隔で配置。人物と人物の間のディスタンスは大きいのに、戯曲が内蔵する愛と憎しみのマグマは、フルの熱量で伝わってくる。三島のセリフは、言葉のオペラ。
「「班女」は一見、とらえどころのない戯曲。でも、俳優たちと稽古しているうちに、この作品が湛える、登場人物たちの思いの濃密さを改めて発見しました」。
普段なら、俳優たちを官能的に接触させるのが熊林演出のはずだが、コロナ下の今、それは禁じ手だ。「その分、三島の文体に対峙して、セリフの響かせ方をしっかり磨き込むことに専念しています」。実子の麻実れい、吉雄の中村蒼は熊林演出の常連俳優。そこへ、熊林とは初顔合せとなる花子の橋本愛が絡むトライアングルをお楽しみに。なお、「班女」は、加藤拓也が作・演出する「真夏の死」とともに2作品続けて上演される。オンライン配信、アーカイブ配信もあるので、そちらもぜひチェックしてみてほしい。
取材・文:戸塚成