くらし情報『「自分に自信のある人はいない」『昭和元禄落語心中』 が心に響く名作である理由』

「自分に自信のある人はいない」『昭和元禄落語心中』 が心に響く名作である理由

登場人物は、みんなものすごく人間くさいです。迷って、葛藤して、なんとなく目の前に現れた道を進んでいく。決して「名落語家に、おれはなる!」とか言って、まっすぐがんばって結果を出す人はいません。わかりやすく問題が解決して友情が深まることもありません。誰もがどこか足りないし、完璧じゃない自分にコンプレックスを抱いています。

落ち度がなくても認めてもらえない
物語は、ひとり一人の人生を丁寧に描いていきます。
初めは、単に未熟な人に見えていた人物たちが、その葛藤や考えを知るうちに、どんどんと魅力的な存在に思えてきます。
和久井は、八雲にもっとも感情移入してしまいます。
てか好みです。細身で繊細で、同期の助六に猛烈な憧れとコンプレックスを抱いている。死ぬために生きているような後ろ向きなところがとても放っておけない感じです。

ひとつ、とても印象的な設定があります。
八雲は、子どもの頃に落語家の先生に弟子入りをして、順調に出世をしましたが、生まれは芸者の家でした。そこは女でなければ居場所のない世界です。しかも、足を故障したせいで踊りもできなくなり、家を出なければならなくなりました。決して前向きな理由で落語を目指したのではなかったのです。

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